■ 緒言
分娩時の疼痛緩和として無痛分娩が広く普及しつつある一方で、分娩の生理的経過を保ちながら疼痛を軽減する「和痛分娩」も選択肢の一つである。しかし、和痛分娩の鎮痛効果については客観的評価が十分とは言えない。
本研究では、和痛分娩の鎮痛効果を定量的に評価するとともに、分娩アウトカムへの影響について検討した。
■ 方法
1. 対象
2025年12月から2026年3月までの当院における分娩70例を対象とした。
2. 和痛分娩の実施
和痛分娩は50例(71.4%)に施行された。傍頸管ブロックおよび陰部神経ブロックを産道腟壁粘膜下局所麻酔法で実施した。各ブロックは単独または併用とし、本人の同意を得た上で適宜施行した。
3. 評価方法
疼痛評価にはNumerical Rating Scale(NRS)を用い、0〜10の11段階で評価した。ブロック前の疼痛を10とし、施行後の疼痛を評価した。
評価回数は延べ101回であった。
なお、傍頸管ブロックと陰部神経ブロックを同時に施行した場合は、それぞれを1回として個別に評価した。
4. 検討項目
・分娩様式
・NRSによる鎮痛効果
・NRS分布
■ 結果
1. 分娩アウトカム
正常分娩は58例(82.8%)、吸引分娩は5例(7.1%)、帝王切開は7例(10%)であった。
帝王切開の内訳は、前回帝王切開4件、筋腫核出術後1件、分娩停止2件(うち和痛ありは1件)であった。緊急帝王切開は、分娩停止を適応とした2例(2.8%)であった。
※当院では無痛分娩は実施していない
2. 鎮痛効果
NRSの平均値は4.4であり、最頻値は7であった。

【傍頸管ブロックと陰部神経ブロック比較】

3. NRS分布
NRSは5〜7に最も多く分布し(約38%)、一方でNRS 5以下は約23%であった。
【有効率(NRS≤5 vs ≥6)】

■ 考察
本研究において、和痛分娩は平均NRS 4.4と中等度の鎮痛効果を示した。分布はNRS 5〜7に集中しており、完全な除痛ではないものの、呼吸法の維持や会話が可能な程度の疼痛コントロールが得られていると考えられる。
これは和痛分娩の目的が「疼痛の消失」ではなく「分娩進行を妨げない範囲での疼痛軽減」であることと整合的である。
また、和痛分娩施行例における帝王切開率は1.4%であり、和痛分娩の導入による分娩様式への明らかな悪影響は認めなかった。
以上より、和痛分娩は分娩の生理的経過を維持しながら疼痛をコントロールする有用な方法である可能性が示唆された。
■ 限界
本研究は単施設における後ろ向き研究であり、対照群を有していない。また、疼痛評価のタイミングが統一されていない点、ならびに101例中31例で疼痛評価が実施されていない点、さらに満足度評価が行われていない点が本研究の限界として挙げられる。
■ 結論
和痛分娩は分娩アウトカムに影響を与えることなく、中等度の鎮痛効果を示した。分娩進行を妨げない疼痛管理として、安全かつ実用的な選択肢である可能性が示唆された。
今後は症例数の蓄積および前向き研究による検討が必要と考える。

